矯正歯科コラム
「治すのが難しい歯並びの乱れって、あるの?」
歯の矯正をお考えになるとき、ご自身の歯並びの乱れが矯正で治しやすいのか、治しにくいのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
歯科矯正には、治療が難しいとされる歯並びの乱れ、いわゆる「難症例」と呼ばれる症例が存在します。歯並びの状態によっては、アタッチメント、アンカースクリューなどの補助的な処置が必要になるケースも。
今回は、矯正が難しいとされる「難症例」のお話です。
歯科矯正の代表的な難症例としては、開咬(かいこう)が挙げられます。
開咬とは、上下の前歯のあいだに垂直方向のすき間があり、上下の前歯を閉じられない歯並びの乱れです。前歯を閉じられず、常に上下の前歯が開いている状態のため、オープンバイトとも呼ばれます。
開咬の方は上下の前歯が閉じられないことに加え、上下の奥歯に負担がかかっているケースも少なくありません。
開咬の矯正では、以下の動作を同時に行わなければならないことが多いです。
[開咬に対する、歯科矯正での一般的なアプローチの仕方]
上記の2つの動きのうち、マウスピース矯正は2.の歯茎側に上下の奥歯を押し下げる圧下を得意としますが、前歯の挺出は苦手です。
一方、ワイヤー矯正は前歯の挺出を比較的行いやすい反面、奥歯の圧下を苦手とします。
上記のような理由から、開咬は難症例とされています。
{インビザラインのアタッチメントの登場により、開咬の矯正が大きく発展しました}
これまで、難症例とされていた開咬。現在も開咬は難しい歯科矯正ですが、インビザラインの独自技術である「アタッチメント」の登場により、以前と比べて、開咬の矯正がしやすくなりました。
インビザラインのアタッチメントにより、歯に樹脂製のポッチをつけ、ポッチに合わせて窪みが作られたマウスピースを装着することで、歯の挺出をしやすくなったのです。アタッチメントが登場して以来、現在、開咬の矯正ではインビザラインで治療を行うクリニックが増えています(※)。
(※)クリニックにより、矯正方法・治療のアプローチの仕方が異なります。
必ずしも、開咬に対してインビザライン矯正を行う訳ではありません。
重度の出っ歯、重度の受け口など、重度の歯並びの乱れの矯正では、後ろから一つ手前の奥歯や一番後ろの奥歯(第1・第2大臼歯)を後方に動かさなければならない場合があります。
奥歯(大臼歯)の後方移動は、犬歯(糸切り歯)の移動と共に、歯科矯正の中でも難しいとされる歯の動きです。
[奥歯(大臼歯)の後方移動が難しい理由]
ワイヤー矯正は、大臼歯を後ろに動かす動きが苦手です。
大臼歯はお口の中でも最後方に近い場所にあります。最後方に近いため、大臼歯は後方に引っ張るための固定源となる歯が少なく(または固定源がなく)、歯を動かしにくいです。
{ワイヤー矯正と比べて、インビザラインは大臼歯の後方移動を効率的に行いやすいです}
大臼歯の後方移動が苦手な、ワイヤー矯正。
一方、マウスピースを歯にかぶせる、という装置の構造上、ワイヤー矯正と比べて、インビザラインは大臼歯の後方移動を効率的に行いやすいです(※)。
(※)大臼歯の後方移動は矯正の中でも特に難しい歯の動きに
分類されます。インビザラインを用いたからと言って、
大臼歯の後方移動を簡単に行える訳ではありません。
難症例に対しては、ワイヤー矯正単体・マウスピース矯正単体で治療を進めるのが難しいケースも多いです。
矯正装置単体での治療が難しい場合は、必要に応じ、アタッチメント、アンカースクリューなどの補助処置を用い、柔軟な治療方針で矯正を進めることが重要になります。自分の歯並びの矯正方法についてご不明な点がある場合は、お気軽にご相談ください。
白山歯科クリニック院長
田賀 紀広